児童・学童支援地域密着専門職

病気や障害があっても伴走すれば、挑戦の先にある“自分らしさ”を見つけることができる

児童・学童支援

庄司剛仁 /  パラレルアクティビティ事業責任者 兼 一般社団法人Hito Reha 理事

 宮城県の石巻市内で、“運動が苦手な子ども”に運動する“楽しさ”を、やればできるという“喜び”を感じてもらい、その子どもの可能性を拓くサポートをしているのは、パラレルアクティビティ事業責任者の庄司剛仁(しょうじたけひと)さんです。

 パラレルアクティビティでは、リハビリ専門職の理学療法士や作業療法士が、1時間かけて子どもと1対1でかかわります。「まず、やってみよう。挑戦することで新しい発見があったり、自分らしさをつくっていくことになる」と語る庄司さんの本質を聞いてみました。

“独り”ではなく“仲間”がいるから前に進む勇気を持つことができる。

 庄司さんは、父親が脊柱管狭窄症になったことをきっかけに、理学療法士を知り、医療という現場に立ちたいと思って、理学療法士の資格を取得します。

 しかし、新卒で入職した病院で東日本大震災という試練が訪れます。「病院の1階でリハビリしていた時に地震がありました。最初は津波が来るとも思っていなくて、津波警報が鳴り、すぐにベッドシーツで患者さんを上の階に上げたりと慌ただしく動いていました。病院は1階まで津波が到達していましたので、帰宅することはできず…。暖をとることもままならない状況の中で、カーテンにくるまったりして一夜を明かしました。このままでは“死ぬんじゃないか”と思うような大変な状況でもありましたが、時を同じくした仲間と支え合うことができ、震災を乗り越えられたからこそ、“仲間を大切にする”という価値観が今の生き方に影響しているのだと思います。」

 庄司さんは、東日本大震災を乗り越え、理学療法士としての経験を積み重ねていく中で、Hito Rehaの代表理事の横山さんと出会います。「病院外での研修の場を通じて、新しい繋がりや場をつくっている面白い人がいました。それが代表の横山です。僕よりも年下でありながら積極的にないものを創っていく姿に感銘を受けて、何かを起こしてくれるだろうとワクワクする想いが強くなり着いていこうと思ったんです。」

 Hito Rehaの理事として活動に加わった庄司さんは、ワクワクする活動を共にする一方で、ある違和感と出会います。

違和感の正体は“やりたくてもできない”。
前進するためには“伴走”というスタイルがしっくりきた。

 「これまでのリハビリを通じて、障害や病気の方でご自宅に退院できたとしても、それまでできていた趣味やスポーツに向き合えなくなると度々相談を受けていました。もちろん身体機能の変化で、できなくなることもありますが、病気や障害によって生活スタイルがガラリと変わり、“やりたいと思えなくなる”という精神面の変化があります。“やりたくてもできない”というジレンマに陥っていることを知り、また挑戦する場所や機会も地域よって格差が生じていることがわかったんです。」

 「一方で、良く参加するパラスポーツのボランティアでは、パラスポーツを楽しむことだけでなく、障害や病気があっても“挑戦する姿勢”を観ることもでき、一体この差はなんで起きるのだろうと考えていました。この違和感がパラレルアクティビティの動機にもなって、できないことがあっても伴走しながら挑戦することで、前向きな自分になれたり、自分らしさをつくれるような取り組みをやりたい、そう思ったんです。」

 代表の横山さんにも相談し、子どものパーソナルトレーニング“パラレルアクティビティ”を事業化させました。「“パラレル”は、“もう一人の自分”、“新しい自分”という意味を込めていて、多種多様なアクティビティを通じて、新しい自分を探しに行こう、そのような想いをのせています。」そして2023年4月にパラレルアクティビティがリリースされます。

挑戦の先にある自分らしさを見つけてほしい

 「パラレルアクティビティは、運動が苦手だったり特性があったとしても、その人の“やりたい”や“可能性”に焦点を当てていきます。リハビリ専門職が個別につくるパラレルアクティビティだからこそ、多様なアクティビティに挑戦することができます。例えば、バスケットボールやバドミントン、早く走るための練習や縄跳びにも挑戦します。日頃の体育館でのレッスンだけでなく、ボルタリングや海水浴、アイススケートなど季節に合わせたアクティビティにも積極的に取り組みます。」

 「子どもたちからは、あれをやりたい、これがやりたい、と自ら挑戦を楽しむ姿がよく見られ、子どもの自信に繋がっています。保護者からも「こんなことが得意とは知らなかった」という声もあがっています。」

 「まだまだ改善の余地がある事業で、いまは小学生を対象にしていますが、どの世代、病気や障害があっても多様な挑戦に伴走できるスタイルを築いていきたいと思います。たとえ、障害や病気があったとしても“やればできる”に変えられるように、人生の選択肢を増やしてほしいと思います。」

 震災を乗り越え、仲間や家族、人を大事にしてきた庄司さんだからこそ、その人の“可能性”に気づいて挑戦を伴走できるのだと感じました。

読者へのメッセージ

 ひとりで悩んで悶々とするより、近くに同じ境遇の方がいたりするし、ぜひ自分の可能性を引き出したり、広げていくために挑戦してほしいなと思います。挑戦が一人で難しい時には仲間や支援をしてくれる人を誘って、挑戦の先にある自分らしさを見つけてもらえたらと思います。

一般社団法人Hito Reha
https://hitoreha.com/

パラレルアクティビティのInstagram
https://www.instagram.com/parallel_activity_2022/

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