相羽 志津香 / 小さな言葉の教室 , 子育てサロンふりぃ
「誰にでもある“違い”ではなく、“同じ”を知ること、見ること、感じることで、発達障害などの療育や教育が身近に感じられる。そのことによって、皆で分かり合える子育てができる場を作っていければと思います。」そう話すのは、相羽志津香(あいばしづか)さんです。
相羽さんは、“小さな言葉の教室”を通じて、発達障害のある子どもとその家族との関わりから、子どもや保護者が感じる“見えない壁”に気づいたと言います。その壁をなくすことでもっと子育ては良くなるのではないか、そう思ったきっかけや想いについて聴いてみました。
豊かさを感じられるための“違い”に出会う
相羽さんは、幼少から学生時代の育ちの中で感じていた違和感があると言います。
「母が集団生活で生きづらそうにしていたり、言わなくても良い一言を言っている場面を見て、“なんでなんだろう”と思うことが度々ありました。また、学生時代にフィリピンでのフィールドワークや世界の貧困地域での英語教育を提供することを通じて、物事の捉え方が変わりました。国によって文化や経済、豊かさの基準が違うのに、日本よりも“豊かに生きている”と感じることがあったんです。」
「ちょうどその頃、発達障害に関する療育や教育に興味を持つようになり、“つみきの会”での仕事に出会いました。そこで、発達障害のある子どもとその保護者と一緒に過ごす中で、うまく教えられないもどかしさを感じました。しかし、“なぜできないのか”を理解するようになると、適切な関わり方や教育についても実践できるようになりました。」
相羽さんは、つみきの会での2年間の活動を終えた後、認定ABAセラピストの資格を取得し、自信を持って活動を続けています。そして、次のチャレンジとして“小さな言葉の教室”を始めました。
“小さな言葉の教室”から生まれる一つ一つの言葉を聴いて、話して、喜び合う
「“小さな言葉の教室”では、発達障害を持つ子どもたちの言葉の練習や療育を個別に提供しています。また、発語があるものの子育てに不安や悩みがある方のために、チャイルドカウンセラーの枠組みも用意しています。この教室を通じて、子どもたちの本来の力や可能性を引き出すお手伝いと、保護者の日常が豊かになるようにサポートしています。」
「例えば、“子どもが言葉を話してくれない”という相談をよく受けますが、子どもは決して“話したくない”わけではありません。言葉が上手くでないだけなんです。だからこそ、“話したい相手になる”ことを保護者にお伝えしています。子どもをよく観察し、知り、理解することで、その子の「伝えたい」という欲求に応えていきます。こうした関わりを通じて、言葉を話す喜びを子ども自身に感じてもらうことをサポートしています。」
「小さな言葉の教室は約8年間活動してきました。当初は一人ひとりの言葉を引き出すことに重点を置いていましたが、利用者が増え、兄弟姉妹と一緒に言葉を学ぶことも多くなりました。しかし、日常生活に戻ると、保護者が二人の子育てに追われ、言葉の練習が難しくなることもありました。そこで、教室がない日でも言葉の練習や親子のコミュニケーションを育むための「きみがだいすき1・2・3 脳が喜ぶ親子の指さしコミュニケーション」という絵本を制作しました。この絵本が、毎日子育てを頑張る皆さんにとって、新しい習慣を始めるきっかけとなれば嬉しいです。」
「さらに、新しい取り組みとして“子育てサロンふりぃ”を2023年から始めました。このサロンは、教室がない日でも子どもや保護者が集まれる場所として利用していただけます。保護者同士がつながり、日々の子育ての悩みや喜びを共有する場を提供しています。」
“違い”ではなく、“同じ”を見つけて、心地良く子育てできるをつくる
「これまで発達障害などの療育と教育に携わってきましたが、定型発達の子どもの保護者と障害のある子どもの保護者の間に“見えない壁”があることに強い違和感を感じています。確かに“違い”はたくさんありますが、それでも育児に関する悩みや喜びは共通していると思います。
保護者同士が話しかけるのをためらっている様子も見受けられ、お互いに“どう接すればいいかわからない”という状況があるようです。だからこそ、一歩踏み出して互いに歩み寄れたらと思っています。“療育”というものが身近にあって、みんなで“分かり合える”ようになれれば、居心地よく子育てができると感じています。だからこそ、小さな言葉の教室でも、子育てサロンふりぃでも、“同じ”を見つけるきっかけになれればと思っています。」
読者へのメッセージ
「私自身も二児の母として、育児で失敗することもあれば、ヘコんだりすることもあります。子どもでも大人でもそれは関係なく、ただ、しっかりと前向きなチャレンジができる環境や応援できる場があるか、それはすごく大切にしています。“あなたのことをもっと知りたい”そう思ってくれる大人が沢山いれば、きっと子ども達も生きやすくなると思います。失敗しても、成功につながる一歩だよ、と声を掛けてくれるだけで安心します。だからこそ、“違い”を恐れることなく“同じ”に目を向けてもらえたら嬉しいです。」
「私の活動や本が気になる人がいたら気軽にInstagramでメッセージをもらえればと思います。」
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