2020年3月17日 石巻かほく掲載
https://www.kahoku.co.jp/special/spe1000/20200317_09.html
誰も取り残されない街に 震災機に石巻移住の横山さん、障害者支援の法人設立
東日本大震災後、石巻市に移住した理学療法士横山翼さん(28)=兵庫県宝塚市出身=が、障害者の社会参加を支援する一般社団法人「Hito Reha(ヒトリハ)」(石巻市中央2丁目)を設立した。被災地の光景に突き動かされ、縁のない土地に飛び込んで6年。「石巻は自分を成長させてくれた。誰も取り残されない地域をつくりたい」。震災から9年の節目に決意を強くする。
横山さんは震災当時、大阪の大学に通っていた。震災の1年前に母親を、1週間後に兄を亡くした。喪失感が大きく、震災をどこか遠い世界の出来事のように感じていた。
2013年3月、被災地を初めて訪れた。南相馬市から陸前高田市まで、バスや電車を乗り継いだ。石巻市では日和山や海沿いの地域を歩き、更地が広がる景色に衝撃を受けた。「自分にも何かできないか」。移住しようと直感的に決めた。
1年後に大学を卒業し、市内の病院に就職した。理学療法士として働く傍ら、各地のまちづくり団体やイベント運営に参加した。復興に向けて奮闘する地元住民や移住者から刺激を受けた。
仕事で障害者と接する一方、趣味で巡るカフェや温泉では障害者と出会わないことに違和感を覚えていた。「障害を抱える人たちにも可能性がもっとある。チャレンジする機会や相談できる場をつくりたい」。フリーランスとして訪問看護などの仕事をしながらビジネススクールに通った。
2月、同世代の仲間3人と「Hito Reha」を設立し、代表理事に就いた。障害者や家族が集う「対話カフェ」の開催や、オンラインのコミュニティー運営、個別相談などを展開する。外出や体験をサポートする事業も企画する。
法人化後、最初の事業となる対話カフェを15日に開いた。障害者スポーツは東京パラリンピック開催を控えて盛り上がる一方、健常者に比べて障害者が体験する機会が少ないと考え、4月にイベントを計画する。
3月11日は毎年、同市南浜地区である「3.11のつどい」に実行委員会のメンバーとして参加する。今年も朝から会場を動き回り、追悼行事の運営を支えた。
横山さんは「震災は今の自分の原点。石巻が災害から立ち上がる姿に、勇気をもらった。目の前の人のため、地域のために事業を成長させたい」と未来を見据えた。