髙平美波 / NPO法人UBUNTU 看護師
「私が出会った子どもたちや地域の数だけ価値がある。そう感じさせてくれたのがUBUNTU(ウブントゥ)でした。だからこそ、いま関わっている子どもたちにも、色んな人と出会って、関係性を築き、生きていると実感してもらえる空間や時間をつくっていきたい。」そう話すのは、髙平美波(たかひらみなみ)さんです。
髙平さんは、一体自分は何者であるべきか、看護師でありながらも“フィルター”を通じてケアや医療を提供していることに疑問を持っていました。UBUNTUと出会い、フィルターを通さず“本質的に子どもたちと出会う”ことの大切さに気づいたと言います。
私は“何者”でもなかったのかもしれない。
「私は一体“何者”なんだろう。看護師になってから、まだ経験は浅いですが、そう感じていたんです。私が居たことで患者さんがホッとできる看護師になりたい。そう思って初めて入職した病院の現実は、いわゆる業務に追われる日々でした。時間や業務に追われ、患者さんに関わる大切なケアと分かっていながらも、どこかゆっくりと関わっていられない現状でした…。」
「その頃、精神的にも不安定だった私は、一時の休職を経て、友人からUBUNTUの仕事を紹介してもらったんです。UBUNTU?っと、気になって見学に行きました。衝撃的だったことが二つあって、一つ目はUBUNSOU(UBUNTUの事業所)に“自然さ”と“暮らし”が見えたことです。それまで実習でも見てきた病院やグループホームは、どこか無機質で物寂しさがありましたが、生い茂る緑と誰かがこの空間に“生きている”という暮らしが見えるんです。二つ目は、理事長の佐々木綾子さんから沢山の質問をもらい、それまで組織や看護師の一人としてしか見られていなかった私を、肩書を取っ払って髙平美波という個人として捉えてくれたことがとても嬉しかったのを覚えています。」
UBUNTUへの転職の決め手は、大人が子ども以上に遊ぶことに全力だったと髙平さんは言います。「今までの私なら看護師だからケアとか医療を提供しなきゃいけない、と思っていたけど、UBUNTUに来て楽しみながら仕事をしていいんだ、と気づかされたんです。自分の知らない世界がこんなにもあるんだというワクワクが決め手でした。」
子どもたちの魅力を伝える為に衣食住を日常から切り離さない。
「UBUNTUに転職して1年半となり、看護師としてはもちろん、UBUNSOUの暮らしを営む一人として何ができるか、どんな関わりができるかを模索してきました。UBUNTUでは同性介助を徹底していますが、羞恥心がいつ生まれるかはその子にしか分からないのでどんなに小さくても同性が介助しますし、“おむつはその人の下着、だからこそおむつは性別や年齢に関わらず他の人に見えないものに入れる”という言葉を聞いて、自分の下着が他者に見える場所に置いてあったら…と初めて自分ごとに置き換えて考えてみて、ハッとしました。その子の尊厳を周りの大人が意識して守っていくことの大切さに気づきました。」
「早下校の時や週末にはショッピングモールのフードコートや飲食店で食事も取ります。お出掛けして外食をすると、近くを通りかかった子ども達が傍に来て、“なんで鼻にチューブが入ってるの?”とか“なんで寝てるの?”と尋ねてくれます。丁寧に答えると興味を示して一緒に遊んでくれることもありますし、吸引機で痰や鼻水が吸えることを説明すると「なにそれカッコいい!」と言ってくれた子もいました。誰にでもある衣食住と日常を切り離さず、子どもの魅力を発揮する機会を作っていくのが今の私の仕事だと思うんです。」
「もちろん、もどかしい場面に出会うこともあって、UBUNTUでは週末にお出掛けをして、街中でのイベントや人混みがある所へでも行きます。すると、好奇心を持った子どもが近づいてきても、大人がそれを静止して“迷惑をかけるから”と言って遠ざけてしまいます。まだまだ世間からのイメージを変えるまでには至っていないのを痛感しますし、新しい人との関係性づくりにもどかしさを感じることもあります。」
誰もが“生きている”と実感できる出会いと笑顔をつくる。
「UBUNTUには重症心身障害を持つ子ども、医療的ケアのある子どももいます。だからといって、医療職だけが関わると、その子の将来は“医療職しか関われない人”になってしまうことに危機感を持っています。UBUNTUでは医療職ではない大人や学生も医療的ケアがある子に関わりますし、地域の大人たちや児童館の子どもたちにも一緒に関わってもらい遊んでいます。“この人だから関われない”ではなく、“大変そう”や“可哀そう”というフィルターを外し、その子どもの日常と本質的に出会うことこそが大切だと思っています。」
「だからこそ、“看護師”が必要なのではなく、“看護の技術や知識を持つ人”が必要なんだと気づいたんです。看護師らしくケアや医療を提供することが仕事ではなく、誰もがその人と関われるために、必要な知識や技術を伝えていくことも大切な視点だと思いますし、人と人を繋ぐために、その子の特性や個性を伝えることも一つの仕事だと思っています。UBUNTUに来て、“誰かと向き合う仕事って楽しい”そう感じています。」
読者へのメッセージ
「UBUNTUの子どもたちとの関わりの中で、自分が一体何者かということを教えてもらいました。そして、職員や地域の人との出会いから、新しい考え方、価値観に触れたことで、看護師や障がいというフィルターを通さず、お互いありのままに誰かと出会うことの大切さを知りました。だからこそ、誰もが肩書きや立場ではなくありのままの自分と出会い、生きやすくなってほしい。そう思っています。」
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