児童・学童支援社会的支援

現在を生きるすべての人の“ケア”に“ワタシノコト”を語る居場所を

社会的支援

後藤 美和 / ケアカフェ ワタシノコト

 あなたは、介護と子育ての両立をする“ダブルケア”、子どもながら親やきょうだいのケアをする“ヤングケアラー”という言葉を知っているだろうか。医療者ではないが、過去を振り返れば“ケア”した経験があるという人も少なくありません。

 どちらの立場にせよ、誰にも打ち明けることの出来ない“孤独”を感じやすいと言われており、後藤美和(ごとうみわ)さんは、現在(いま)を生きるすべての人のケアについて、排除されることなく話せる“ワタシノコト”をつくりました。そんな後藤さんがつくる居場所について話を聴きました。

誰にも共感されない想いは、人を“孤独”にする

 後藤さんは現在も“ダブルケア”の最中ですが、過去の介護と育児の両立がうまく出来なかったことについて、「あの頃は辛い時、しんどい時にこそ、ありのままの自分を話せる場所が欲しかったと感じたんです。ダブルケアという複雑な状況は、誰からも共感されない想いに変わり、やがて“助けて”と言えなくなったり、やりたいことがあっても“諦め”や“できない理由”を探すばかりでした。」

 「その後、子どもも成長し日常が落ち着き始め、あの頃の自分に必要だったことは何かを考えたんです。単にケアの当事者ということだけでなく、家族を取り巻く環境にも大きな変化もありました。そう考えたとき、誰からも排除されることなく“自分”のことを話せる居場所が必要だと思ったんです。それが“ワタシノコト”であり、現在もケアする当事者である私ができることだと思いました。」

誰もが“ケア”を身近に感じ、お互いに支え合える居場所へ

 「ケアカフェ ワタシノコトは、月に1回コワーキングスペースENGAWAを利用して開催しています。毎回のテーマは「ケアについて」なのですが、参加してくれる人が話しやすい空間をつくるために工夫していることがあります。“ケアしている方”、“ケアしている方をケアしたい方”、“興味・関心のある方”の3つのタグをつけ、誰がどの立場でこの居場所を利用してくれているか、一目で分かるようにしました。」

「現在までに4回開催し、参加者やSNSで色んな声を頂きました。

  • 参加者として“支える”つもりで来たのですが、“支えられている”自分に気づくことができた
  • 将来、親の介護を担うと思ったときに、ワタシノコトがあるだけで心の支えになると感じた
  • 現在は参加できる状態ではないが、ワタシノコトがあるとわかったことで、孤独ではないと感じることができた

と、私があの頃に抱いていた孤独に少しでも応えることができていると思えています。」

 「また、“介護”や“子育て”は女性だけの問題でないので、疎外感を与えず、誰もがケアのことを話せて、参加してくれた人には“すみません”ではなく“ありがとう”に変えていく場にしています。自分のことばっかり話をして“すみません”ではなく、話を聞いてくれて“ありがとう”のように感謝が増える場にしていきたい。ちょっとしたことですが、お野菜を作りすぎて食べきれない人と野菜が欲しい人を繋ぐ場にもなっていて、提供者さんにはありがとうカードをお返しして感謝を言い合うこともしています。」

ワタシノコトは、あなたの“ありのまま”を語れる居場所

 「“ダブルケア”は私が経験したことですが、我が子にとっては“ヤングケアラー”だったということも事実になります。そう考えたときに、ダブルケアやヤングケアラーは別々で捉えるべきではないと思ったんです。親として子どもに負担をかけてはいけない、それも大切な考え方ですが、親にとっては話せる場もなければ、それを周囲に打ち明けることも難しくなってきます。やがて孤独や孤立を生み出し、その姿をみた子どもが本音を言わず塞ぎ込んでしまうこともあります。」

 「だからこそ、自分が何を大事にしたいかを周囲の目を気にせず選択できることが大切だと考えています。ダブルケアラーであっても、ヤングケアラーであっても、ありのままを受け入れていく居場所に安心安全があってほしいと思っています。そのことを伝えていくために、ダブルケアとヤングケアラーの連続した展示会ができればと思っています。」

読者へのメッセージ

 「在宅介護の数年間は“出口の見えない”日々でした。諦めることを自分に言い聞かせ、周囲とは違う子育ての日々に孤独を感じていました。ですが、数年前の自分に“あの頃の時間は無駄ではない”と伝えたいと思っています。大変だった頃を支えてくれた友人や家族に感謝もしています。だからこそ、現在もケアをしているすべての人に“大丈夫、あなたは独りではないよ”と伝えたいです。」

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