横山翼 / 一般社団法人Hito Reha 代表理事 , ユニバーサルシッター管理者
「保育や療育を必要としている人に適切に届き、育児の辛い時期に寄り添えるサービスとしていきたい」と話すのは、 ユニバーサルシッターの横山翼(よこやまつばさ)さんです。
横山さんは、これまで多くの障がい児やその保護者と接してきた中で、「辛い時期を一緒に乗り越えてくれる存在の大切さ」に気づいたそうです。今回は、ユニバーサルシッタ―の事業を通して、どのように保護者と子どもに伴走しているのかお聞きしました。
辛い時期の育児に寄り添うことで保護者のケアを実現
“ユニバーサルシッター”は、宮城県仙台市での居宅訪問型認可外保育(ベビーシッター)事業です。「本来の“自分を取り戻す”ため、障がい、特性のある子どもでも安心・安全に保育・療育を受けることができ、保護者の孤独や不安に寄り添う」ことを目的として、2024年9月から事業を開始しています。
「ユニバーサルシッターでは、看護師、理学療法士、子育て支援員などがご自宅を訪問し、お子さんと一対一の保育・療育、一時預かりを提供しています。シッターの中には、障がい児の子育てママも在籍しており、発達が気になる子や障がい児特有の悩みや不安に寄り添うこともできます。」
「このユニバーサルシッターを始めるにあたり、課題だと思っていたことが二つあります。一つ目は、障害福祉制度など子どもが利用できるサービスや施設は増えているのに、保護者に対するケアをする場所、柔軟に寄り添うことができるサービスは少ないと感じています。二つ目は、保護者から声を聞く中で、“辛い時期”をどう乗り越えたかが大事だということに気づかされました。保護者にとって“誰と一緒に”辛い時期を乗り越えたか、どう寄り添ってもらったか、それこそが今後も続く子育てや家庭生活をより良くしていく重要なことだと感じたんです。」
このことから、柔軟に保護者のケアと子どもへの保育・療育を提供できるベビーシッターを選んだと言います。では、“本来の自分を取り戻す”伴走型の保育や保護者ケアの実際はどうなのでしょうか。
子育てに伴走し、子どもの成長を保護者と一緒に実感する
「ユニバーサルシッターは、制度や状況、環境にかかわらず保育・療育を必要としている子どもに届けることが大切な役割になります。例えば、保育園でトラブルが増えてきた発達が気になる子どもを、療育に連れていきたいけど受給者証がない。という状況でも、制度に頼らず療育を提供することが可能です。また、医療的ケアなどによって保育園での集団生活は制限があっても、訪問看護等と連携を取りながらご自宅で保育を提供することも可能です。」
「通常の保育園では子どもの数に対して保育者の数が圧倒的に足りない状況があります。そのため、子どもの“できない”や“課題”は良く見えるのですが、“こうすれば上手くできる”というきっかけ作りができていないことが多いと感じています。ユニバーサルシッターは、一対一の個別保育ですので、子どもの“できない”を“できる”に変えるための適切な伴走がしやすいことが特徴になります。」
「保護者も同様に、集団生活の場である保育園等でトラブルが起きたりすると、どうしても上手くいかない育児に悩みや不安が増えていきます。そうすると、純粋に子どものことを愛せなくなったり、本来は子どもの強みや優れている所が見えるのに、見逃してしまうことが増えてしまいます。
そうではなく、適切な伴走で子どもが本来の力を発揮したり、“できない”が“できる”に変わる瞬間をご自宅で一緒に見ることで、子どもの成長を保護者と一緒に実感することもできます。子どもの姿をみて保護者は安心をしたり、やるべきことがわかりますので、保護者の不安や悩みも和らいでくることが多く、単なる相談や話を聞くに留まらず、具体的に次にすすむイメージがつきやすいと思います。」
そこで現在ご利用されている方の具体例を教えてもらいました。
「家に帰ったら椅子に座って何かに取り組むことが10分もできないというお子さんがいました。でも、その子の好きなものと創作活動を掛け合わせて学習場面を作ると、30分も集中して座って作業ができるんです。1ヶ月2ヶ月と積み重ねると、日常の場面でも「色塗りしたい」という声が子どもから出てきたりとか、「平仮名の書き方練習」に取り組めるようになったりと変化が起きていました。その姿をみた保護者からは、こんな姿を見たのは初めて、と驚いていましたね。積み重ねていくうちに自宅でも自主的に取り組み始めることで、“なんとかなるかも”と思えたと話されていました。」
仙台から「誰もが育児と家庭生活を愉しいと思える」を実現させる
横山さんには、ユニバーサルシッターで達成したい3つの目標があると言います。
「一つ目は、療育を受けたい人には療育を、保育を受けたい人には保育を提供できるセーフティーネットの役割を実現していきたいと思っています。行政や多様な施設と連携しながら必要なサービスが届かないという事態を防ぐことができればと思います。」
「二つ目は、保護者の生活の質をある一定の水準で守っていくという観点で、保護者、特に母親の働くをサポートしながら、“育児が楽しい”“生活に満足できる”そんな風に思っていただけるような、サービスの提供や品質を保っていきたいと思っています。」
「三つ目は、発達障害や重症心身障害のように診断名がついていたとしても、誰もが一緒に遊べる、学べる機会、つまりインクルーシブな社会の実現のため、その仕組を仙台の中から、保育の中から広がるように模索できればと思います。」
読者へのメッセージ
「大変だったり苦しかったりする時は、まずHito Rehaに声をかけてくれたら。もし働きたいというご希望や、今の現状に対してなんとかしたいと思いがあれば、Pieceプロジェクト等、何かヒントがあげられると思うので、その時はお問い合わせください。」
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